医師生活 外来診療

妊娠と葉酸摂取の重要性について解説します

妊娠を希望されるまたは可能性のある方。

その関係者の方にもぜひ知っておいていただきたいことがあります。

今回は自分が外来で質問されてうまく答えられず、勉強した内容についてまとめてシェアします。

 

本記事の内容

  • 外来でのひとこま
  • 妊娠にあたって葉酸はなぜ必要なのか?
  • 妊娠を希望した日からやってほしいこと
  • まとめ: 葉酸摂取は妊娠前から必要です

 

外来でのひとこま

ある御病気で外来通院をされている方からこんな質問がありました。

 

今度結婚することになりました。妊娠を希望していますが今飲んでいるお薬は大丈夫ですか。

そうですか、おめでとうございます。そのお薬は妊娠の可能性がある方には推奨されませんので、こちらのお薬に切り替えましょう。何か他にご質問はありますか。

葉酸を飲んだ方がよいと聞いたことがあるのですが、具体的にはどうしたらよいでしょうか。

そうですね、葉酸のサプリを1日400ugという量で飲むとよいとされていますね。

いつからいつまで飲んだ方がよいでしょうか。

妊娠の少なくとも1ヶ月前から妊娠後3ヶ月まで飲むことが推奨されていると思います。(なんとかここまでは答えられたけど、これ以上聞かれると自信がないぞ、、、)

その後はいらないんでしょうか。

すいません、、、いまの時点ではそこから先は正しく理解していないので、勉強しておきます、、、

いろいろ聞いてしまって申し訳ありません。

ということがありました。

妊娠可能な女性には葉酸摂取が必要であることは理解していましたし、

多少勉強したことはあったのですが、

正確にお答えできなかったので今回改めて勉強しました。

その内容をこの記事ではシェアしたいと思います。

【注意】本記事の内容は原則的に特に既往症などのない方に対するものです。

何かの御病気をお持ちで病院に通院中の方は、必ず主治医の先生の指示に従ってください。

 

妊娠にあたって葉酸はなぜ必要なのか?

答え: 神経管閉鎖障害(Neural tube defects:NTDs)という病気の危険性を減らすため。

 

神経管は脊椎動物の発生の過程で形成される管状構造物で脳や脊髄の元となります。

神経管は受精から約28日ごろに閉鎖され、管状になります。

ラングマン人体発生学 T. W. Sadler 著 安田峯生 訳

メディカル・サイエンス・インターナショナル社 より引用

この過程でうまく閉鎖が行われないと、脊髄髄膜瘤や脳瘤などの原因となります。

これらのことをまとめ神経管閉鎖障害と読んでいます。

受精後28日は妊娠6週に相当しますので妊娠に気がつかれていないことが多い時期です。

妊娠が判明したころには神経管が閉鎖する大事な時期は過ぎていることがあります。

このことはとても大切です。

 

適切な葉酸摂取は神経管閉鎖障害の生じる危険性を約70% 減らす効果があることが大規模研究で示されています。(1)

(1) De-Regil et al. Effects and Safety of Periconceptional Oral Folate Supplementation for Preventing Birth Defects. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Dec 14;(12):CD007950.

先程述べた通り、神経管が閉鎖するのは、妊娠に気がつく前ですから、妊娠する前から葉酸を摂取しておく必要があるということになります。

 

 

妊娠を希望した日からやってほしいこと

葉酸はどれくらい、どのようにして、いつからいつまでの期間、摂取すればよいのでしょうか。

 

どれくらい、どのようにして摂取すればいいか

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を見てみましょう。

理解を難しくさせるのは葉酸は以下の2つがあります。

  • 食事性葉酸 (N5 ─メチルテトラヒドロ葉酸: 天然由来の葉酸)
  • 狭義の葉酸 (プテロイルモノグルタミン酸: サプリからとる葉酸)

食事性葉酸はその名の通り、食事から摂取する葉酸ですが、体内で利用できる効率が約50%と低いです。

一方狭義の葉酸は100%体内で利用されます。

例えば 1日の葉酸必要量が狭義の葉酸として200ugの場合は、食事性葉酸 400ugを摂取する必要があるということです。

食事性葉酸、狭義の葉酸という言葉を意識して「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の図を見ていきます。

 

 

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」「ビタミン(水溶性ビタミン)」から引用

推奨量はRDAなので RDA〔妊〕、RDA〔授〕をみていくと、妊婦さんは食事性葉酸で480ug/日、授乳婦さんは食事性葉酸で340ug/日が推奨されていることがわかります。

妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性および妊娠初期の妊婦さんは(2)にあたり、狭義の葉酸で400ug/日が基準となっていることがわかりました。

また耐用上限量 UL1000ug/日(年齢により900ug/日)で設定されていることも注意をしましょう。

まとめると

  • 妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性および妊娠初期の妊婦さん = 通常の食事+サプリなどから400ug/日、かつ1000ug/日を超えない。
  • 妊婦さん = 食事から480ug/
  • 授乳婦さん = 食事から340ug/

ということになります。

これでどれくらいとどのように摂取すべきかがわかりました。

 

いつからいつまでの期間摂取すればよいか

私が調べた範囲で、最近報告され信頼性の高い情報としては、米国予防医学専門委員会 USPSTFによる

Final Recommendation Statement

Folic Acid for the Prevention of Neural Tube Defects: Preventive Medication. January 10, 2017 

ではないかと思います、この中の一部を引用します。

Timing

Half of all pregnancies in the United States are unplanned.6 Therefore, clinicians should advise all women who are capable of pregnancy to take daily folic acid supplements. The critical period for supplementation starts at least 1 month before conception and continues through the first 2 to 3 months of pregnancy.

USPSTF  Folic Acid for the Prevention of Neural Tube Defects: Preventive Medication. January 10, 2017より引用

訳: 米国における半数の妊娠は計画外である。

したがって医師は妊娠の可能性があるすべての女性に葉酸サプリメントを毎日摂取するようにアドバイスすべきである。

葉酸補充の重要な時期は受胎の少なくとも1ヶ月前から妊娠の最初の2.3ヶ月まで続く

 

となっています。平成12年の厚生労働省の通知でも 葉酸摂取時期は少なくとも妊娠一ヶ月前から妊娠三ヶ月までとされていますので、これは間違いないと言えるでしょう。

葉酸摂取の開始時期については早くて悪いことはないと思われますので、妊娠を希望されたら速やかにと考えて良いと思います。

 

【重要】このような話をした時にサプリメントだけ飲んでいればよいと誤解される方がいらっしゃるといけませんので、ここで強調しておきます。

ここまでのお話は、あくまでバランスの良い食事を毎日していること が前提となっています。

バランスの良い食事に加えて、葉酸摂取量をどのように維持するかということを考えてください。【重要】

 

 

まとめ: 葉酸摂取は妊娠前から必要です

いかがでしたでしょうか。

葉酸摂取が妊娠前からなぜ必要なのか。

葉酸をどれくらいの量でどのように、いつからいつまで摂取したらよいかをまとめました。

妊娠を希望される方やその配偶者・パートナーの方などにも広く知っていただく一助になれば嬉しく思います。

今後も情報を発信していきます。

  • この記事を書いた人

nouga

医師【専門分野】脳神経外科 ▶︎ 30代 ● 医師歴10年x投資歴8年x株式投資3年の経験です。どんなことでも調べることが大好きで、良いと思ったことをシェアしていきます。適切なリスク管理で生活を豊かにしていきましょう。

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