病院でお薬を処方されて飲んでいらっしゃる方へ。今回は外来でよくある出来事を通じて、みなさんに知っておいてほしいことについてお話します。
血液さらさらの薬はとても大事なのでしっかり読んでいただきたい回です。本記事に登場する薬剤は全て一般名で記載しています。
本記事の内容
- 血液さらさらの薬を飲んでいますか?
- 血液さらさらの薬 抗血小板薬と抗凝固薬
- 血液さらさらの薬を飲んでいる人に伝えたいこと
- まとめ: 血液さらさらの薬はとても大切な薬。それだけに正しい理解をしましょう。
血液さらさらの薬を飲んでいますか?







このようなやり取りはとても良くあります。
血液さらさらのお薬を飲んでいる方はとても多いです。しかし、ご自分がなぜその薬が必要なのかをご存じでない方も多いと感じています。
今回はこの血液さらさらのお薬のうち、脳の病気でよく用いられる代表的なものについてご説明していきます。
血液さらさらの薬 抗血小板薬と抗凝固薬
血液が固まるためには 血小板(血液を固める成分) と 凝固系(血液が固まるための仕組み) の働きが重要です。
血液さらさらの薬はすべてこの血液が固まる仕組みのどこかに働いて効果を発揮しています。
このうち 血小板に働いて作用する薬が抗血小板薬です。
凝固系に働いて作用する薬が抗凝固薬です。
このように区別されているように、使われる病気が異なります。
同じ血液さらさらの薬でも全然違うものだということをご理解ください。
では抗血小板薬と抗凝固薬のご説明です。
抗血小板薬
名前の通り、血小板に働いて血液を固まりにくくします。
抗血小板薬を内服するのはおもに血管が詰まってしまう病気を予防するためです。
また血管に金属性のステントを留置した場合も抗血小板を内服してステント内に血栓ができるのを予防します。
抗血小板薬は 心筋梗塞や脳梗塞といった血管が詰まる病気の治療・予防に用いられます。
日本ペインクリニック学会
抗血栓療法中の区域麻酔・神経ブロックガイドライン
総論2. 抗血小板薬・抗凝固薬の薬理学 より引用
図のように血小板が働くための仕組みがあります。
青で囲まれているアスピリン、チエノピリジン系(クロピドグレル、プラスグレル)が脳神経外科、循環器領域で用いられます。
また真ん中あたりのホスホジエステラーゼを阻害して作用するシロスタゾールというお薬も脳神経外科領域では良く使用される抗血小板薬です。
抗凝固薬
こちらは凝固系に働きかけて血液を固まりにくくします。
抗凝固薬は血液が固まりを作って体中に飛んでいってしまう病気を予防するために内服します。
一番多く使われているのは心房細動とよばれる不整脈の場合です。
心房細動は心臓の上側の部屋である心房が不規則に細かく震えてしまう病気です。
心房の動きが悪くなることで血液の流れが淀んで、血栓ができやすくなります。
この血栓が脳に向かって飛んでいき血管を詰まらせてしまうと脳梗塞になってしまいます。
このように心臓から飛んだ血栓による脳梗塞は心原性脳塞栓症とよばれています。
抗凝固薬によって、心臓内での血栓ができることを防ぎ脳梗塞の危険性を下げることができます。
坂田ら 抗血栓薬の種類と作用機序 消化器内視鏡 Vol.30 No.10 2018 1383-1391 より引用
図のように凝固系は構成されています。
ワーファリンはプロトロビン(第II因子の別名があります)、Ⅸ、Ⅶ、Ⅹの因子に働きます。
医療関係者はこの数字の並びでにくなっとーと覚えます。
その他の抗凝固薬は現在4種類ありますが、まとめて直接経口抗凝固薬 (DOAC)と呼ばれています。
一般名はダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンです。
抗血小板薬と抗凝固薬は違う薬
ここまで書いたように、抗血小板薬と抗凝固薬は違う薬です。
この記事を読んでくださった方は、誰かに聞かれたら
”私は血液さらさらの薬を飲んでいます” だけではなくて
”私は脳梗塞のために抗血小板薬を飲んでいます” とか
”私は不整脈があるので抗凝固薬を飲んでいます” とお返事できるようになるのではないでしょうか。
このように外来でお返事してくださる方が増えたら大変嬉しく思います。
血液さらさらの薬を飲んでいる人に伝えたいこと
最後に皆さんにお伝えしたいことがあります。
主治医の先生や薬剤師さんから言われているかもしれませんが、ここでも強調しておきます。
- 自分の判断で中止しない。
- 用法用量を守って正しく内服する。
- 内服を忘れた場合は薬によって対応が違うのであらかじめ主治医の先生や薬剤師さんに聞いておくとよい。
- 内服を忘れたからといって2倍飲んだりしない!
まとめ: 血液さらさらの薬はとても大切。関心を持って正しい理解をしましょう。
いかがだったでしょうか。今回は血液さらさらの薬についてお話しました。
非常に大切な薬ですから、正しくお薬を理解して適切に使っていただきたいと思います。
今後も情報を発信していきます。